最適化機能について


 TRYCUT2000/3000でサポートしているNCデータの最適化機能は他機能に比べて操作が複雑なこと から、ヘルプでの説明に加えて、もう少し詳細な補足をしてゆきたいと思います。


[最適化機能の目的]
 TRYCUT2000/3000で取り扱うNCデータの最適化とは、切削送り(G01/G02/G03 など)にもかかわらず空転している部分が多い場合、その部分の軌跡を取り除き少しで も加工時間を短くしたいという要求や、切削除去量やアップカット、ダウンカットなど 加工方向によって切削送り速度(Fコード)をコントロールし、効率の良いNCデータ に変換したいという要求に応え、最適なNCデータに変換することを目的にしてい ます。

[最適化機能が有効な場合]
 昨今のソリッド系のCAM(NCデータ出力)システムでは、最適化を既に行って いる場合が多いものと思われます。その場合は特にこの機能を利用しても意味が ないことになります。ただし、一度計算してみたNCデータを、そのまま再利用する 場合で、ワーク形状や材質などの変更があるような場合は、本機能は有効です。
 またCAM側システムで製品形状との干渉計算からのみNCデータを作成している ような場合は、CAM側での最適化を行うことは理論上不可能ですので本機能が有効に なります。

[被切削材の指定について]
 空転しているか否かや、切削除去量などを感知して、NCデータにフィードバック をかける機能ですので、指定された被切削材の形状が実際のワークと細部にわたって 同一もしくは、若干のオフセット形状(より安全)である必要があります。正確には 機械に実際設置されているワークの形状そのものがベストということになりますが、 そこまでゆかなくても例えば同一段取りで粗加工から中仕上げ、仕上げと加工してゆく 場合などは、中仕上げ以降はTRYCUT2000/3000での粗加工のシミュレーション 結果(被切削材)を利用して最適化することは可能です。
 もし被切削材の形状が実際と異なっている場合は、切削部分であるのに早送りに変 換されていたり、早送りの部分が無意味に切削送りに変換されていたりすることが考 えられますので、本機能の本来の意味がなくなります。

[単位移動当たりの切削除去量の指定方法]
 最適化機能を利用する前提として、工具設定ファイルに単位移動当たりの 除去量を基準にしたF値を工具ごとに設定して おく必要があります。
 この単位移動あたりの除去量とは、工具が単位(1mm)移動することに より削り取られるワークの総体積を想定し立方mmで表したものです。この値を境界にして 前後の最適なF値を指定します。一般的には材質や 工具の種類、切削ポイント、工作機械の仕様など様々な環境によって最適な指定値は 異なってきます。
 最適な値を求めるには、通常それぞれの加工においてどのような除去量で切削して いるかを大雑把に把握しておくことが必要です。ひとまず日常業務で使用している NCデータをもとに最適化処理で切削モニタリング ファイルを作成して見て下さい。データ量が大きくなるので小さなデータで行うほ うがよいです。
添付ファイルNIFTY!.NCの例からの抜粋
N3(0004)G01X70.000000Y-26.000000Z5.000000(N)
N3(0005)G01X70.000000Y-25.000000Z5.000000F100(A0.750000F1000)
N3(0006)G01X70.000000Y-24.000000Z5.000000F100(A7.937592F1000)
N3(0007)G01X70.000000Y-23.000000Z5.000000F100(A17.171068F500)
N3(0008)G01X70.000000Y-22.000000Z5.000000F100(A20.863629F500)
 切削モニタリングファイルは上記のように工具の移動 ピッチごとに切削の状況を出力したデータです。
 各行の最後の( )内のアルファベットの記号の次ぎに記入されているデータが 単位(1mm)移動当たりに換算された切削除去量になります。ここでアルファベットが"N"の場合は 切削していないことを表し、その他次ぎのような仕様になっています。 N:空転 A:一般切削 V:垂直切削 U:アップカット D:ダウンカット
上記のように、工具進入時は0.75で徐々に増加(工具に被切削材がかぶってくる) 傾向にあることが判ります。このような切削量の状況を再検討して、工具負荷の少ない ところをどのようなF値にするべきか、また切削方向によってどのようなF値がよいか などを検討した上で、工具設定ファイルでの 最適化F値を指定して下さい。

<工具設定ファイル内(.TTL)での指定例>

MAGAZINE05 = BALL/ 10.0,10.0 LENGTH/30 ARBOR/20,20
OPT-F/ 100,25,500,10,1000
OPT-F(V)/ 50,30,250

 この工具が選択されているときの最適化は、通常切削で、単位移動当たりの切削 除去量が、25より大きい場合はF100が指定され、25〜10の間ではF500が、10より少 ない場合はF1000が指定されます。
 ただしOPT-F(V)の指定があるため、垂直加工部分を認識すると、その部分のみ単位 移動当たりの切削除去量が、30より大きい場合はF50が指定され、30より少ない場合は F250が指定されます。

 指令文は以下の4種類があります。
・OPT-F(A)又はOPT-F:一般切削部分の指定
・OPT-F(V):垂直加工の部分指定(省略可)
・OPT-F(U):アップカット時の部分指定(省略可)
・OPT-F(D):ダウンカット時の部分指定(省略可)

 OPT-F(V),OPT-F(U),OPT-F(D)のそれぞれの指定が省略されている場合は、それぞれ の部分は一般切削部分の指定に従って最適化が行われます。


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