工具設定ファイルTRYCUTはATC(自動工具交換)機能をもつ仮想NCマシンです。 したがって、切削時に使用する工具は、すべて工具マガジンにセットしておく必要があります。 このセッティングを、工具設定ファイル(「F2」 キーで編集)において行います。 また、ATCに対応しない場合でも、指定工具ごとに設定ファイル (サンプルファイルのBALL10.TTLなど)を作っておき、ポップアップメニューの 「設定ファイル(T)」、または 工具表示ダイアログの「変更」、 ドラッグ アンド ドロップにより切り換えが可能です。
工具のセット方法は、サンプルファイル(ATC.TTL)を参照していただいた方がイメージがつかめるものと思います。
また、工具表示ダイアログによりビジュアルな確認ができます。 ★刃先形状(CUTTER,BALL,TAPERBALL,FLAT,BULL,RADIUS,DRILL,VERTICAL,OVAL,OVALR文)の指定 一番汎用的な刃先形状の定義は、CUTTER文指定で、APTフォーマットに準拠しています。 色々な工具種類を定義することが可能ですが、専用の定義文はより簡単に定義ができます。 例えば、ボール・エンドミルは、BALL文で定義したほうが簡単です。
CUTTER/D,r,E,F,α(;Db),β(;Du),h(,n)(工具全般の定義文)
VERTICAL/D,w,h(,n)(バーチカルミル専用定義文) D:工具直径、w:チップ幅、h:有効刃長(チップ高さ)
OVAL/D,ra,rb,h(,n)(オーバル/楕円 工具専用定義文) TRYCUT独自の変則仕様として、以下の定義文を用意しています。ワーク形状の編集などでお使い下さい。 KEGAKI/D,h(,n)(けがき工具専用定義文、詳細はこちら) ※KEGAKI文指定時に同時に指定できるのはPEN文だけです。 ★突出し長形状(LENGTH,LENGTH2,LENGTH2A,LENGTH3,LENGTH3A文)の指定 突出し長の定義は省略も可能です。 ただし、この状態で工具保持具形状の定義を行っても無効になり、 テーパー部/工具保持具と被切削材との干渉は当然のことながら考慮されません。 (省略された工具を使うと、レスポンスはよくなります。) 突出し長形状は干渉を判断する計算に使われますので、実際より大きめのサイズ、 特にシャンク径(Ds)は余裕をとって定義して下さい。 これは被切削材のもつデータ構造が、Z値のみ保有する格子点データであることが理由です。 被切削材の精度(ピッチ)を細くすればするほど、それに応じて余裕代を減らして行くことは可能ですが、 処理速度との兼ね合いもありますので、運用形態(サイズ,要求精度,etc,,,)に応じて最適値をご指定下さい。 (※どうしても元サイズでの定義を希望される場合には、 初期設定ファイル(Ctrl+F1)の[Define]セクションの"ARBOR CLEARANCE"を利用する手段もあります。 Dsの値に対して内部的に余裕代を与えて処理します。) なお各テーパー最下部の径(指定はできない)には、自動的(強制的)に最適な余裕代を加算して計算します。 突き出し長の指定 LENGTH/L L:突き出し長
※工具径とシャンク径が異なる以下のような工具は、LENGTH2文を利用して下さい。 Lu:首下長さ Lt:テーパー部長さ(Lt≧0.0) Ds:シャンク径 ※またテーパー部分が2段階になっている以下のようなテーパーシャンクのような工具は、LENGTH3文を利用して下さい。 LENGTH3/L,Lu,Lt,a,b,Ds Lu:ストレート部長さ(首下長さ) Lt:テーパー部長さ(Lt≧0.0) a:1段目テーパー角度(通常5度以下?) b:2段目テーパー角度 Ds:シャンク径 注)工具メーカーのカタログでは、Ltの部分はLuをプラスした値で表現されている場合があります。 TRYCUTでは、必要Lu(首下),Ltの長さをそれぞれ独立して算出する機能を用意しているため、 Ltは1段目のテーパー部のみで長さを指定するようにしていますのでご注意下さい。 Lu(首下),Ltの、それぞれの必要長さ算出は、 LENGTH2指定時と同様「アーバー/テーパー干渉チェック(A)」の指定にて行って下さい。
※LENGTH2/LENGTH3におけるテーパー部を有効刃(例:センタードリル)とする場合は、
それぞれLENGTH2A/LENGTH3Aと記述して下さい。
この場合、刃先定義側のh(有効刃長)の指定は、原則としてテーパー部を超える部分までの長さを指定して下さい。
もしそれより短めに指定されている場合には、自動的にテーパー部までの長さに補正して認識します。
テーパー部は有効刃ですので必要首下長さの出力は行われません。
★工具保持具形状(ARBOR,ARBOR2,ARBOR3文 又は外部ファイル(*.ATL))の指定 工具保持具形状の定義は省略も可能です。 ただし、工具保持具と被切削材との干渉は当然のことながら考慮されません。 (省略された工具を使うと、レスポンスはよくなります。) 保持具形状は干渉を判断する計算に使われますので、実際より大きめのサイズ、 特に幅の寸法(D1,D2,,,Dn)は余裕をとって定義して下さい。 これは被切削材のもつデータ構造が、Z値のみ保有する格子点データであることが理由です。 被切削材の精度(ピッチ)を細くすればするほど、それに応じて余裕代を減らして行くことは可能ですが、 処理速度との兼ね合いもありますので、運用形態(サイズ,要求精度,etc,,,)に応じて最適値をご指定下さい。 (※どうしても元サイズでの定義を希望される場合には、 初期設定ファイル(Ctrl+F1)の[Define]セクションの"ARBOR CLEARANCE"を利用する手段もあります。 D1,D2,,,Dnの値に対して内部的に余裕代を与えて処理します。) なおARBOR2指定時の保持具形状最下部の径(指定はできない)に関しましては、 自動的(強制的)に最適な余裕代を加算して計算します。 ARBOR/D1,H1,,,,,,,Dn,Hn ( nは1〜10まで ) - 階段状定義 ARBOR2/D1,H1,,,,,,,Dn,Hn ( nは1〜10まで ) - 傾斜状定義 D1:第1段保持具の直径 (D1 ≦ D2 ≦ ... ≦ Dn) H1:第1段保持具の長さ (H1 ≧ 0) ・ ・ Dn:第n段保持具の直径 Hn:第n段保持具の長さ (Hn ≧ 0)
ARBOR3/D1,H1,K1,D2,H2,K2,,,Kn-1,Dn,Hn ( nは1〜10まで ) - 混合定義 K1 〜 Kn = 0 or 1(整数) K1:第1段目から第2段目が階段状(0)か傾斜状(1)か K2:第2段目から第3段目が階段状(0)か傾斜状(1)か ・ ・ Kn:第n段目から第(n+1)段目が階段状(0)か傾斜状(1)か
指定例: ☆また工具保持具に関しては一括して同じものを定義しておく方法もあります。 上記のARBOR,ARBOR2,ARBOR3文 又は外部ファイル(拡張子*.ATL)を、 最初のMAGAZINE文より前に定義した場合、 基本的には全工具の保持具がこれで定義されているとみなされますが、 工具それぞれに保持具の定義が存在する場合は、その定義を優先します。 ※突き出し長(LENGTH,LENGTH2,LENGTH3)指定がない工具には、保持具は無いとみなされます。 ARBOR/D1,H1,,,, MAGAZINE01 = ... MAGAZINE02 = ... . . . 又は、 ATL = ファイル名 MAGAZINE01 = ... MAGAZINE02 = ... . . . ※ここで指定するATLファイルは、起動中に更新した場合自動再読み込みの対象になります。 ※ファイル名の指定で""ダブルクォーテーションは不要です。 ※TTLファイル側と同一フォルダに保存されている場合にはフルパス指定は不要です。 ※TTLファイル側と別のフォルダに保存されている場合にはフルパス指定して下さい。 ★指令位置の先端からの高さ(SHIFT文)の指定
SHIFT/s s:指令位置の先端からの高さ ★ペン番号(PEN文)の指定
PEN/n n:ペン番号(1〜15)、n≧16指定時はn=15と見なす
直径10mmボールエンドミルで、切削面にペン番号1の色を付けたいときの例 ★工具負荷限界値の指定
LIMIT/v v:単位移動(1mm)当たりの切削除去量限界値 この単位移動(1mm)当たりの切削除去量限界値の最適な値は、工具径や、 工具形状、チップの枚数、素材、工法、機械の剛性、送り速度、スピンドル回転数など、 様々なファクターにより変わってくるもので、 基本的には現場ごとに異なるものと解釈しておく必要があります。 また、あくまでも目安的なものですので、 いくら最適な値を指定したとしても実際との違いは出てきます。 このLIMIT文使用時は、 一度最適化機能で出力される切削モニタリングデータを参照していただき、 日常加工している経路が、 どれぐらいの除去量で加工を行っているかを把握しておいていただく必要があります。 切削モニタリングデータのテキスト版は、 一般的なテキストエディターで参照可能です。また、 バイナリ版はフォーマットを 公開していますが、一目で解かるようなファイルではありません。 そのため、それぞれ簡単に目視で確認できるツールもフリーソフトで公開しています。 全般的にどれぐらいの除去量で加工しているか、 最大値(Peek)がどれぐらいかの、おおよその見当を一目で把握することができます。
また、モニタリングデータなどで情報として出力している切削方向(全面部、垂直部、
アップカット部、ダウンカット部)別にも、
それぞれの限界値を個別指定することも可能です。
指定方法は、それぞれの4つの値をカンマ","区切りで以下のように指定して下さい。
<指定例> 本LIMIT文指定により、 限界値以上に加工しようとするところを見つけるとシミュレーションは強制的に中断してしまいます。 このことがシミュレーション環境において求められている場合は、 非常に有効なものになるはずですが、 あくまで参考情報にしたいというレベルでシミュレーションを行う場合には、 強制的な中断ではなく、情報を後でリストとして参照したいというニーズもあるかと思われます。 このような場合は、"LIMIT"文を"LIMITP"文で置き換えて下さい。 それぞれ限界値を超えたところのNCデータにおけるブロック番号: 座標値:除去量の羅列を作業フォルダ下にファイル名"LIMITP.TXT"というテキストファイルを出力し、 もしひとつでも限界値を越えているものがあれば自動的に開かれます。
<出力例>
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"LIMIT"文,"LIMITP"文は、双方共に単位移動(1mm)当たりの切削除去量限界値
指定によるものですが、これらのそれぞれに対して、"LIMITS"文,
"LIMITSP"文
に差し替えることより、「単位時間(1秒)当たりの切削除去量限界値」指定とみなします。
"LIMITSP"文指定時は、
ファイル名"LIMITSP.TXT"が"LIMITP.TXT"と同様フォーマットで作成されます。 単位移動(1mm)当たりの切削除去量に関しましても、目視で確認できるツール TrMonitor(フリーソフト)をご利用いただければ、 だいたいの目安を知ることができます。
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★最適化送り速度の指定 最適化後の送り速度を、以下の4種類の切削状態(方向)別に、 単位移動あたりの切削除去量を基準にして、段階的にF値を定義しておきます。
※F値:f1〜fn(f1<f2<・・・<fn) 分割数:1 ≦ n ≦ 20
OPT-F(V)/f1,v1,f2,v2・・・vn-1,fn 垂直加工部用
OPT-F(U)/f1,v1,f2,v2・・・vn-1,fn アップカット部用
OPT-F(D)/f1,v1,f2,v2・・・vn-1,fn ダウンカット部用
<単位(1mm)移動あたりの切削除去量(立方mm)の例> 目次へ |